燃えよ万平
~ 時代劇鑑賞の記録と独り言 ~
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日本怪談劇場 第8話
怪談 首斬り浅右ヱ門
(原作/脚本: 宮川一郎、監督: 唐順棋)
公儀御様御用 (こうぎおためしごよう) の山田浅右ヱ門 (栗塚旭) が川で助けた身投げ女は、昔の恋人・およう (長谷川稀世) だった。 いずれは首斬り役人になる浅右ヱ門と夫婦になるのを拒み、小栗新之助 (高津住男) と一緒になったはずのおようだが、今は心中者の片割れとして役人に追われる身。 浅右ヱ門の留守中に姿を消したおようが、奉行所から一生奉公として吉原に下げ渡され、女郎になっていると知った浅右ヱ門は、首斬りの御役を返上し、彼女を身請けして共に生きようと決意する。
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【所感】
東京12チャンネル (現・テレビ東京) で1970年に放送された、古典怪談のオムニバス作品。 四谷怪談、牡丹燈籠、耳なし芳一など、よく知られた怪談のほか、オリジナル作品も加えた全13話のテレビシリーズ。 この第8話は、宮川一郎によるオリジナル作品。
1970年ということは、「燃えよ剣」 と同時期なわけで、見た目には歳さんとほとんと同じ…… (^^;) 同じような髪型だし。 うーむ、やっぱりハンサムだわ。 目を向いた顔は迫力ありすぎて、ちと怖いけど (これがまた多いのよ。 しかもアップで/笑)。 殺陣は首斬りのシーンがメインだったけど、後半、幻覚 (っていうか幽霊?) を相手に闇雲に刀を振り回すところでは、ちょっとハラハラしてしまったりして (きゃーっ、失礼!)。 小栗は 「大道芸人の剣で俺が斬れるのか」 なんて挑発するし (初代・山田浅右ヱ門が実は大道芸人あがりという話から)!
ちなみに、ここに登場する浅右ヱ門は5代目とのこと。 「暴れん坊将軍」 で新さんこと徳川吉宗と悪者退治している 「山田朝右衛門 (役名がこの字を使っている)」 は、年代から見て3代目と思われるので、今回の浅右ヱ門のおじいさんなんだね。 この後、長きにわたって朝右衛門を演じていくことになろうとは、栗塚さんも想像してなかっただろうなぁ。
首斬りという御役のため、斬られた者たちの恨みを受けてしまった……と単純に考えればいいのかもしれないが、「悪いヤツ」 の小栗の霊に脅かされた浅右ヱ門が自らの首を落としてしまう (実際にそのシーンは無いが) ラストは、何となくすっきりしなかった。
が、いろいろ考えてみて、人としての心をちゃんと持った人間・山田浅右ヱ門を描いた話なんだな、と思った。 斬った罪人たちを供養していること、御役目があくまで試し斬りであることなどがうまく盛り込まれているし (ちょっとナゾだった男・亥三が 「お前は斬った人間の肝を売っているそうだな」 と言っていたのも、山田家が副業として人の肝臓を使った漢方薬・人胆丸を売っていたという話につながるのかも)。 不運にも御様御用の家に生まれてしまったが、その役目を捨てて惚れた女と幸せに暮らしたいと願う普通の男、人間なのだ。 が、それは許されず、首斬り役として 「一生奉公」 しなければならない悲しい運命。 強引に女を自分のものにした小栗とか、「お前は首を斬っていればいいんだ」 みたいなことを言って浅右ヱ門を役目に縛りつける牢奉行・石出帯刀 (信欽三) の方がよっぽど汚い人間なのに、そんなヤツらに翻弄されて浅右ヱ門は壊れていってしまう。 なぜ……?
いずれにせよ、この話で一番怖かったのは幽霊とかじゃなくて石出帯刀だった。 首がない浅右ヱ門の遺体を見て、発した言葉が 「また探さねばならんな」 だもんなぁ。 終始、薄笑いを浮かべているのも不気味だった。
出演: 栗塚旭/山田浅右ヱ門、高津住男/小栗新之助、土方弘/文五郎、鮎川浩/弥助、可知靖之/桜井、上林/水野、大平進/亥三、田所千鶴子/やりて*、信欽三/石出帯刀、長谷川稀世/およう
* 「やりて」 とは何ぞやと調べてみたところ、オンラインの 「日本語俗語辞書」 の “やり手婆” の項目に、『時代劇では、奥部屋でいろりの前に座って遊女に指示をしたり、「いい娘いるわよ」 と呼び込みをしている中年女がこれにあたる』 との記載あり。
*敬称は略させていただいています。